第13章 おとぎのくにの 5
舞踏会まであと数日となったある日。
お兄さまたちも続々屋敷に戻ってきていて。
その日の夜ご飯は久しぶりに家族全員が揃っていた。
うちは家族の人数が多いし、家族仲も良いけど、みんな忙しいから全員揃うことなんて滅多になくて。
食事は私一人になることも多いから、賑やかな食卓が嬉しい。
まぁ、私一人の時はこっそりカズと一緒に食べてるから寂しくはないんだけどね。
今日の話題は当然舞踏会のことで。
最初のうちは、お兄さまたちがご自分が社交界デビューした時のお話や、ちょっとした失敗談なんかを面白おかしく話してくれたりして。
みんなで笑いながら和やかに食事を楽しんでいたのだけど。
「サトもついに社交界デビューか…」
お父さまのそんな呟きをきっかけに、お兄さまたちは口々に私の心配をし始めた。
「ああ、こんなに可愛いサトを社交界に出さなければいけないなんて…」
「狼の群れの中に子羊を放り込むようなものだよ」
「サト、誰に声を掛けられてもついて行っちゃだめだからね」
「絶対1人にならないで、必ず私たちの近くにいるんだよ」
「どこにどんなやつが紛れているか分からないからね」
え…舞踏会ってそんなに危険な場所なの…?
ただでさえ乗り気ではないのに、心配されればされるほど不安は増していく。
どんどん顔が引きつっていくのが自分でも分かる。