第2章 おとぎのくにの 2
「もうすぐジュンのお誕生日なんだってね。ジュンの手紙にも書いてあった?」
「···え?」
ショウさまからの手紙を読まれたサトさまに尋ねられ、思わず聞き返してしまった。
「8月30日だって···あの、書いてなかった?」
「···はい」
ジュンさまからの手紙の内容は、いつもジュンさまの近況や他愛もない話だけれど。
私は手紙をいただけるだけで、ものすごく幸せで。
今までいただいた手紙はすべて大切に保管してある。
私の宝物だ。
今回の手紙もいつも通りで、ジュンさまのお誕生日のことなど一言も書いてはなかった。
それは私なんかには知らせる必要はないと判断されたということで···
所詮私なんてジュンさまにとってその程度の存在だということだ。
分かりきっていることなのに、思いの外ショックを受けてしまう。
今さらこんな当たり前のことに傷付いてどうするんだろう。
「きっとジュンは恥ずかしくて自分からは言えなかったんだよ。私だって、ショウからジュンの誕生日パーティーに来れないかって誘われて知ったんだもん」
サトさまは黙ってしまった私を励まそうとしてくださる。
サトさまに心配を掛けるわけにはいかない。
「誕生日パーティーに行かれるんですか?」
笑顔を作って尋ねると
「いくら婚約者の弟のパーティーでも、まだ婚約は公表されていないし。お父さまたちが許してくださるとは思えないよね」
サトさまは困ったように苦笑された。
婚約が決まってからというもの、旦那さまとお兄さま方の溺愛と過保護ぶりに拍車がかかってしまっている。
それでもお嫁に行くまではその愛情に応えたいと、サトさまは黙って従っていた。