第2章 おとぎのくにの 2
ショウさまから送られてくるサトさま宛の手紙の中には、毎回ジュンさまから私へ宛てられた手紙が同封されている。
“4人だけの秘密の友だち”という約束は今も守られていて。
王子から侍女への手紙なんて人目が憚られておおっぴらに送れないため、このような形を取っているのだけれど。
そもそも、どうしてジュンさまがそこまで私を気に掛けてくださるのか、その理由が私にはさっぱり分からない。
私はサトさまのように高い身分を持っているわけでも、美しい容姿を持っているわけでもないし。
王宮にはこのお屋敷とは比べものにならないくらい大勢の人が働いているだろうから、侍女という立場の者が珍しいわけでもないだろう。
一体どんな気まぐれなのか分からないし、いつ飽きてしまわれるかも分からない。
けれど、私はジュンさまからの手紙をいつも心待ちにしていた。
もともと私など口をきくことも叶わないような立場のお方なのに。
初めてお会いしたあの日、侍女である私なんかと友だちになりたいんだと真っ直ぐに見つめてくださった瞬間から、私の心はジュンさまに捕らわれてしまっている。
今のこの関係は本当に儚いもので、ジュンさまのお心次第でいつ途絶えてもおかしくない。
私の想いが叶う日は一生こない。
それが現実。
生まれたときから決まっている身分の差はどうにもならない。
自分を卑下するつもりはないし、私は自分の仕事に誇りを持っている。
サトさまにお仕えできて本当に幸せだし、許されるならばサトさまがお嫁にいかれた後も仕え続けたいと思っている。
一生サトさまのお側にお仕えすることが私の幸せで、私の願いだ。
それ以上の望みなんてない。
それでも···
今だけの夢を見ることをやめられずにいた。