第13章 おとぎのくにの 5
「私1人でなんて…」
「サトさまはお1人ではありませんよ。お城に行けばショウさまがいらっしゃるじゃないですか」
しょんぼりしてしまった私を、カズが一生懸命励ましてくれる。
「ジュンさまもいらっしゃいますし…それに、今回は旦那さまと奥さまだけでなく、お兄さま方も全員参加されますし」
そう。
お父さまとお母さまは分かるとしても。
もう家を出てしまって遠方で暮らしているお兄さまたちや、まだこのお屋敷にいるけれどお仕事が忙しくて中々会えないお兄さまたちも。
今回の舞踏会は私のために全員が出席してくれることになっている。
とても心強いし、お兄さまたちの愛情を感じてとても嬉しい。
「サトさまには皆さまがついていらっしゃいますよ」
それでも、やっぱりカズにもそばに居てほしいと思うのは、私のワガママなんだろう。
舞踏会は気が重いけど、ショウたちと久しぶりに会えるのは嬉しい。
ショウとの婚約を正式に発表出来るのも嬉しい。
でも、その場にはカズにも居てほしいんだけどな…
これ以上何か言ってもカズの気持ちは簡単には変わらないだろうから、とりあえず黙って頷いたら、カズはホッとしたような笑顔を見せた。
……でもね、私は諦めてないよ。
実はこっそり期待してるんだ。
お母さまが何か企んでるんじゃないかって。
だってカズにも私とお揃いのドレスを誂えて、新しく増えた講義も全部私と一緒に受けさせて。
カズを見る度にすごく楽しそうな顔をしてるんだもん。
そんなの何か隠してることがあるんじゃないかって思っちゃうよね。
例えば、実はカズにも招待状が届いてるけど隠してる…とか。
だって、ショウや…特にジュンはカズのことも招待したいと思うんだよ。
王妃さまもカズのこと気に入ってるし。
だから…ね?
まぁ、確証はないから余計なことは言わないけど。
とりあえず今は、一緒にダンスレッスンを受けて疲れているはずのカズもソファに引っ張りこんで、昼食までゆっくり休むことにした。