第13章 おとぎのくにの 5
しかもさ…
「本当にカズは一緒に参加出来ないの?」
「サトさま…」
ポツリとこぼれた言葉を聞いて、カズが困った顔になってしまった。
「カズも一緒に参加しようよ」
「無理ですよ…私は侍女ですよ?」
舞踏会への出席が決まってから何度も繰り返してるやり取り。
「私のような立場の者が参加出来るわけありません」
カズの返事は毎回同じだ。
…そう、今回の舞踏会にカズは参加しない。
カズが一緒じゃないことが私の不安の最大の理由なのだ。
「今回もお揃いのドレスを作ってるのに…」
お母さまはいつも通り、カズの分のドレスも注文している。
カズは、舞踏会のためのドレスなんか自分には必要ないと訴えていたけど、お母さまは聞く耳を持たなかった。
「奥さまに押し切られてしまいましたからね」
カズが困った顔のまま苦笑する。
「私には着る場がないから無駄になってしまうのに…」
「無駄にするのは勿体ないよ!だからカズも一緒に舞踏会に行こう!ね!」
何とかカズの気持ちが変わらないかと、言葉を重ねてみるけど。
「王家主催の舞踏会に私なんかが参加するなんて、そんな無礼なこと出来ません」
何を言っても頑としてカズの答えは変わらない。
初めての外の世界…それが城での舞踏会だって、カズさえ一緒ならここまで不安ではなかったと思う。
カズが一緒ならむしろ楽しめたかもしれない。
でも今回はカズはいない。
想像しただけで気が滅入る。
カズがジュンと街に行った時、カズはやっぱり不安そうだった。
きっとカズもこんな気持ちだったんだろうな。