第2章 おとぎのくにの 2
ーカズsideー
ショウさまとジュンさまと初めてお会いした日からいくつかの季節が流れ。
つい最近、サトさまとショウ王子の婚約が正式に決まった。
実際に結婚されるのは数年先だし、公に発表されるのももう少し先になるようだけど。
王子と国一番の大貴族の一人娘の婚約に異議を唱える者なんてほとんどいないだろう。
サトさまを溺愛している旦那さまとお兄さま方は、この世の終わりのように悲しまれているけれど。
サトさまだっていつまでもお嫁にいかず、このお屋敷にいるわけにもいかないだろうし。
とても良いお話だと思う。
初めて婚約の話を聞いたときは、サトさまはひっくり返るほど驚いていらっしゃったけれど。
その頃には、サトさまがショウさまに好意を抱いていることは私の目から見ても明らかだったし。
ショウさまは忙しい中でも時間を作ってサトさまに会いにいらっしゃるし、週に一度は手紙を送ってくださるから。
きっと、ショウさまもサトさまと同じお気持ちなんだろうと思っていた。
身分が高ければ高いほど政略結婚が当たり前の中、サトさまとショウさまはお互いに想い合っている。
お2人ほどの高貴な身分で、好きな人と結婚出来ることは、ものすごく幸せなことだと思う。
「サトさま、ショウさまからのお手紙です」
「ありがとう、カズ」
ショウさまからの手紙をサトさまへ届けると、サトさまは嬉しそうに微笑んで受け取られた。
婚約が決まってからのサトさまはとても幸せそうで、今まで以上にお美しくなられた。
サトさまの幸せそうな笑顔は私のことも幸せにしてくれる。
サトさまはすぐにペーパーナイフで封を開けると
「はい、これはカズの」
中から取り出した1枚の便箋を私に差し出した。
「ありがとうございます」
頬が熱くなるのを自覚しながら、そっと受け取って胸に押し当てる。
そんな私をサトさまはとても優しい瞳で見ていた。