第1章 おとぎのくにの
「ショウさま···」
「友だちになったのだから、さま付けはやめてください。敬語もなしですよ」
「まぁ!じゃあ···ショウ」
「なんですか?サトさま」
当然だけれど、男の子を呼び捨てにするのも、敬語を使わないのも初めてで。
ドキドキが止まらない。
「もう!ショウもさま付けと敬語やめて!」
「そうです···そうだね、···サト」
ショウに呼び捨てで呼ばれると、ますますドキドキしてしまう。
「カズもだよ?」
「ジュンさま···それは無理です~」
「むぅ」
ジュンは不満そうな顔をしたが、泣きそうなカズを見て諦めたように笑った。
「まぁ、友だちになってくれただけでもいいか」
「ありがとうございます」
微笑ましい2人のやり取りにほんわかした気持ちになる。
「ショウとジュンに私の秘密の場所を教えてあげる」
嬉しくなった私は、いつもの場所に2人を招待することにした。
「こんな所にこんな空間が?」
「秘密基地みたい」
ショウもジュンもキョロキョロと辺りを見回している。
「ここは私とカズしか知らない場所なの。私はここでお昼寝するのが大好き」
コロンと芝生の上に寝転ぶ私をショウもジュンも呆気に取られたように見た。
ドレス姿で地べたに寝そべる公爵令嬢なんて初めて見たのかもしれない。
でもこれが私だから。
友だちには本当の私を知ってほしい。
「サトさまっ!!」
カズが焦ったように私を起こそうとするから、逆にその手を引いてカズを隣に寝かせる。
「とても気持ち良いのよ」
起き上がろうとするカズを抱き締めながら、ショウとジュンに微笑みかけると
「じゃあ俺も」
私の隣にショウが寝転がった。
それを見てカズの隣にジュンも寝転ぶ。
「ああ、本当に気持ち良いね」
「でしょう?」
ショウの言葉に嬉しくなる。
自分の好きなものを分かってもらえた喜びは私を幸せな気持ちにしてくれる。
王子たちまで寝転んでしまったので、カズも諦めたのかおとなしくなった。
そのまま、しばらく黙って4人並んで寝転んでいた。
ちょうど木の枝が日陰を作ってくれて、気持ちの良い風が頬を撫でていく。
見上げた空はどこまでも青い。
沈黙もなんだか心地よかった。