第1章 おとぎのくにの
王子に命令されれば、カズは従うしかない。
俯いて黙り込んでしまったカズと、悲しそうなジュンさまにショウさまが優しく声を掛けた。
「ジュン、友だちというのは命令してなるものじゃないだろう?」
「分かってます。でも、カズが···」
ジュンさまの目に涙が浮かぶ。
それほどカズと友だちになりたいと思ってくれているのだろう。
ショウさまはジュンさまの頭をそっと撫でると、カズに向き合う。
「カズは私たちと友だちになるのが嫌?」
「嫌ではありませんっ···でも···」
カズは私相手でも身分を気にしてしまう。
相手が王子であれば余計だろう。
それでも、今は身分の壁を乗り越えてほしい。
「嫌ではないのなら、友だちになろう?私たち4人だけの秘密にすれば誰にも叱られないよ」
「秘密の友だち!なんだか素敵な響きですね」
場の空気がこれ以上重くならないように、努めて明るい声を出す。
「カズ、俺と友だちになって?俺はカズと友だちになりたい。これは命令じゃなくてお願いだよ?」
ジュンさまがそっとカズの両手を握る。
カズは真っ赤になって暫く考え込んでいたが、やがて小さく頷いた。
「私でよければ···よろしくお願いします」
「やったー!!ありがとう、カズ!!」
ジュンさまは本当に嬉しそうに破顔すると、カズの手をブンブン振り回す。
「ひゃっ···ジュンさまっ···もう···ふふっ」
カズは目を白黒させていたが、ジュンさまがあんまり楽しそうに笑っているからか、最後はクスクス笑いだした。
「カズが笑った···」
カズの笑顔にジュンさまが動きを止めて釘付けになる。
「カズは笑った方が可愛いな」
本心であろうジュンさまの言葉にまたカズは真っ赤になった。