第1章 おとぎのくにの
「そうですか。いつか···公爵が快く送り出してくれる日が来たら、王宮にも遊びに来てくださいね」
「はい、ありがとうございます」
「それまでは、私が時々こちらにお邪魔していいですか?」
ショウさまの思いがけない言葉に胸が高鳴る。
「また来てくださるのですか?」
「サトさまがお嫌じゃなかったら」
「嫌なはずありません!でも、本当に?」
「お約束します」
こんな機会、今日限りだと思っていた。
それが、またお会いできるの?
「もし良ければ、私たちをサトさまたちの初めての友だちにしてもらえませんか?」
「ええっ!!友だち!?」
「駄目ですか?」
驚きすぎて声が出ない。
それでも必死で首を横に振ると、ショウさまはホッとしたように微笑んだ。
「私に友だちが出来るなんて···夢みたい。嬉しい」
ぽつりと呟いたら、ショウさまの笑みが深くなった気がした。
「カズも友だちだからな!」
「ええっ!!無理です!そんな恐れ多いこと!」
ジュンさまもカズに微笑みかけるが、カズは強ばった顔で全力で拒否しながら後ずさった。
そんなカズの態度にジュンさまは明らかに傷付いたようだ。
「なんでだよ!俺と友だちになるのがいやなのか?」
「私は侍女です!身分が違うんです!王子さまと友だちだなんて···そんな···そんなこと···」
後ずさるカズにジュンさまがジリジリとにじり寄っていく。
カズだって本当は友だちになりたいはずだ。
初めて出来る友だちが嬉しくないわけがない。
それでも身分の壁が気になって素直に受け入れられないんだろう。
「じゃあ命令すればいいのか?命令すれば友だちになるのか?」
カズの態度に苛立ったのか、ジュンさまがそう言い放つと、命令という言葉にピタリとカズの動きが止まった。