第9章 おとぎのくにの 4
本音を言うことが許されるのならば、私だってジュンさまにお会い出来ないのはとても寂しい。
ほんの少しでいいからお顔を見たい…と思っている。
でも私はそんなことを言える立場ではないのだ。
今は何の気まぐれかジュンさまに気にかけていただけているけれど、ジュンさまが飽きるまでの関係だと重々承知している。
このままジュンさまがいらっしゃらなくなれば、そのまま消えてしまう…なんの約束もない儚い関係…
それを悲しいと思ってしまう私こそ、身の程知らずのワガママな人間だ。
ジュンさまを想う私の心はサトさまみたいに綺麗ではなくて。
自分の醜さばかり目について気持ちが沈む。
表には絶対出さないようにしているつもりだけれど、私のそんな気持ちの変化はサトさまにはすぐ伝わってしまうみたいで。
サトさまはそっと手を伸ばすと、頭を優しく撫でてくれた。
「ジュンもカズに会えなくて寂しいと思うよ?手紙にも書いてあったんじゃない?」
「…はい」
今も手紙のやり取りは変わらずに続いていて。
本当に忙しそうなのに、その中でも私のことを忘れずにいてくれることが嬉しい。
今朝届いた手紙には、急に来れなくなったことへの謝罪の後に、確かに“カズに会いたい”と書かれていた。
ジュンさまも同じ気持ちでいてくださるなんて夢みたいに幸せで。
今だけの関係だと分かっていても、少しでもこの幸せな時が長く続きますようにと祈りたくなってしまった。