第8章 こわい夢 『キミのとなりで ずっと』より
-Sside-
急いで保健室に向かいながら自己嫌悪が止まらない。
腕の中のカズはくたっとしていて。
こんなに体調が悪いのに全然気付かなかったなんて…
「ニノ…もしかして朝から具合悪かった?」
「……………」
智くんの問いかけにカズは答えなかったけど。
でもその沈黙がそうだと認めてた。
「なんで言ってくれなかったの?」
「だって…」
つい問い詰めるような口調になってしまったら、せっかく泣き止んでたカズの目が再び潤んで。
「ああっ、ごめん!怒ってるんじゃないよ!怒ってないから泣かないで!」
焦るし、こんな状態のカズを責めてしまったことで更に自己嫌悪に陥る。
腹が立ってるのは自分にであって。
カズに当たるなんて以ての外だ!
カズはいつも以上にうるっうるな瞳でまっすぐに俺を見つめると、拗ねたように口を尖らせた。
「だって翔ちゃんに会いたかったんだもん…翔ちゃんと一緒にいたかったんだもん…」
「………っっっ///」
あまりの可愛さにズキューンと心臓を撃ち抜かれてしまう。
「ちょっと翔くん!ニノの可愛さにメロメロになるのはいいけど、ニノのこと落とさないでよ!」
「大丈夫だろ、どんな状態でもニノを危ない目に遭わせたりはしないと思うぜ」
いつになく厳しい智くんと智くんを宥めてくれてる潤はひとまず置いとくとしても。
カズにも咄嗟に返事が出来ないでいたら、悲しそうなカズの目からまたポロリと涙が零れた。
「翔ちゃんはちがうの?ほかに好きな人ができたから?」
「違う違う!!カズっ、それ夢だから!俺が好きなのはカズだけだよ!」
とんでもない誤解がまだ続いてる!
高熱のせいなんだろうけど、夢と現実がごっちゃになっちゃってるよ…
とにかく早く休ませてあげなくちゃ!