第7章 誕生日 to SATOSHI
そもそも、ニノが何をこんなに怒っているのかというと。
「………智が誕生日教えてくれなかった」
これ。
ついさっき、雑談の最中にポロッと言っちゃったんだよ。
「そう言えば今日誕生日なんだよね」って。
雅紀は「えー!そうなの?おめでとう!!」って満面の笑顔で祝ってくれたのに。
ニノは「知らなかった…なんで教えてくれなかったの?」って拗ねちゃったんだよ。
でもさ、聞かれもしないのに自分から何月何日が誕生日ですって普通言わなくない?
でもうるうるの上目遣いで睨んでくるニノには、そんなこと言えない。
「ごめんね」
「今教えてもらったじゃん。何がそんなに不満なんだよ?」
再び平謝りを続けてたら、今度は雅紀が不思議そうに首を傾げた。
確かにそれは俺も疑問だ。
ニノは一体何でこんなに怒ってるんだろう?
俺もその答えを知りたくて。
ニノをじっと見つめてみたら、ニノは一瞬言葉に詰まったけど。
「だって智は俺の誕生日にプレゼントくれたから。俺も智の誕生日をちゃんと祝いたかったんだもん…」
下を向いてポソポソと教えてくれた。
耳が赤くなってて照れてるのが分かる。
「ニノ…」
俺はなんだか感動してしまった。
ニノの言うプレゼントっていうのは、俺の描いた絵のことなんだけど。
俺もニノの誕生日なんて知らなくて。
当日に雅紀が祝ってるのを聞いて初めて知って。
知ったからには俺も何かお祝いをしたくなって。
俺に出来ることを考えて、その場でニノの横顔をスケッチしてプレゼントしたんだ。
ニノはすごく喜んでくれた。
可愛い笑顔でありがとうって受け取ってくれた。
でも描いたのはノートの切れ端だし、ほとんど落書きみたいなものだったから。
まさか、ニノがこんなに大きなこととして受け止めてくれてるとは思ってなかったんだ。