第5章 おとぎのくにの 3
あ、でも…
私は本当に楽しいけれど、王子であるショウはどうなんだろう?
地面に座ることに抵抗があったりしないかな?
ちょっと心配になって様子を伺うと、ショウはニコニコしながらクッションに凭れるように座ってくつろいでいて。
ショウも楽しんでいるように見えてホッとした。
「サトさま、これは“ぱいなっぷる”という南の方の果物のジュースです」
カズに手渡されたグラスには黄色い飲み物が入っていて。
勧められるまま口をつける。
「おいしい…!」
「良かった!きっとサトさまがお好きな味だろうと思っていたんです」
初めての味だけどとても美味しくて。
感想を素直に口に出したら、カズの顔がパァっと輝いた。
嬉しそうに今度は食べ物を勧めてくれる。
「サトさま、こちらはラップサンドです」
「サンドイッチとはちょっと違うのね」
渡されたのは、やっぱり初めて目にするもので。
「そうなんです。市場では皆これを食べながら歩いていたんですよ!」
「まぁ!」
ものを食べながら歩くなんてしたことは当然ないし、考えたこともなかった。
それは直接目にしたカズはかなり衝撃を受けたんじゃないかと思っていたら
「カズも食べ歩きに挑戦したんだよな?」
「ええっ!?本当に?」
ジュンがさらっと言うから驚いてしまう。
「はい…でも私は上手く食べることが出来なくて…ジュンさまはお上手でした」
「そんなの別に褒められることでもないけどな…///」
はにかむカズと照れるジュンの間に漂う空気がほんのり甘い。
やっぱり2人の距離が以前より近くなってる気がする。