第5章 おとぎのくにの 3
カズに勧められるままあれこれ口にするけれど、どれもとても美味しい。
実際にカズが市場で口にして美味しいと感じたものを料理長に再現してもらったって聞いたけど。
もしかしたら私好みの味に変えてくれているのかもしれない。
一品一品、カズとジュンが市場でのエピソードを交えながら説明してくれるのも楽しくて。
かなりの量を食べてしまった気がする。
お腹がはち切れそう。
中には手づかみで食べるものもあって…
お日様の下、ちょっとドキドキしながら思い切って手で食べたご飯はびっくりするくらい美味しく感じた。
もしかしたら人目のこととか、そういうのも全部考えた上でカズたちはこの場所を選んでくれたのかもしれない。
きっと外に出られない私のために、気分だけでも味わえたら…と計画してくれたんだと思う。
2人の気持ちがとても嬉しかった。
「ねぇ、サト」
仲良くお喋りしているカズたちを微笑ましく見ていたら、いつの間にかすぐ隣にショウがいて。
「手紙にも書いたけど、サトのことはいつか必ず俺が連れて行くからね」
「ありがとう」
優しい眼差しでまっすぐ見つめられて、嬉しいけどちょっと照れくさい。
「サトが外に出られるようになったら、一緒に行きたい場所がたくさんあるんだ」
でもキラキラした瞳からショウが本当に楽しみにしてくれているのが伝わってきて。
「うん、楽しみにしてるね」
幸せであったかい気持ちが胸に広がって、私も自然と笑顔になって。
その“いつか”が早くきますように…なんて、心の中でこっそり神さまにお願いした。