第5章 おとぎのくにの 3
当たり前だけど、寝ているカズを見るのも初めてで。
目を閉じてるとまつ毛長いのがよく分かるなぁ…とか、ほっぺが真っ白ですべすべだなぁ…とか。
つい無防備な寝顔をじっくり眺めてしまったりして。
でも女の子の寝顔を勝手にこんなにジロジロ見るのは失礼だと思い直して、急いで視線を逸らす。
そうしたら今度はカズの膝の上に置かれたお菓子の箱が目に入った。
帰りに受け取ってきたサトへのお土産。
カズはずっと大切に抱えていたけれど、寝てしまったものだから今にも滑り落ちそうになっていて。
万が一、砂糖菓子が粉々になってしまったらカズは悲しむだろうし、それ以上に自分を責めてしまうだろう。
そうなる前にと、カズの手からそーっと箱を取り上げた。
カズはよほど深く眠っているのか、馬車がどんなに揺れても全く目を覚まさない。
これなら行きのように酔わずに済むだろうと安心する。
でも揺れる度に右へ左へとカズもグラグラ揺れているのが気になって、少し悩んだけれどカズの隣へ移動した。
すると狙い通りグラグラしていたカズがぽすっと俺に凭れかかってきて。
俺の肩に頭を乗せてやると、その体勢で安定した。
カズが俺に凭れて安心したように眠っているのが嬉しくて。
そのぬくもりも、重ささえも愛しく感じて。
この幸せな時間がずっと続けばいいのにと思った。