第5章 おとぎのくにの 3
「じゃあ一緒に選ぼう?」
「はい」
今度は2人寄り添って並んだ商品を一つ一つ見ていく。
一緒に覗き込んでいるから、カズの顔が触れそうに近い場所にあってドキドキする。
「これは?」
「…素敵だと思います」
「じゃあ、こっちは?」
「ええと、素敵です…」
緊張を隠すように目に付いたものを次々に指さしてカズに聞いてみるけど、カズはあまり心のこもっていないような返事ばかりで。
ちょっと不満に思ってカズを見ると、カズは横顔でも分かるくらい困った顔をしていた。
俺の視線に気付いたのか、こちらを振り向くと申し訳なさそうに頭を下げる。
「ごめんなさい…私こういうの本当に分からないんです…」
声音にも困惑の色が滲んでいて。
本当に困っているのが伝わってくる。
「だから…あの、ジュンさまが選んでくださいませんか?ジュンさまが選んでくださったものが一番嬉しいですから…」
わがままなことを言って申し訳ありませんと、赤い顔で謝るカズはめちゃくちゃ可愛くて。
こんなのワガママだなんて全然思わない。
むしろ甘えてくれてるみたいで嬉しい。
「分かった!カズに似合うのを選ぶからな!」
俄然張りきって、さっきよりも真剣に一つ一つに向き合う。
どうせならよりカズに喜んでほしいから、納得いくものを時間を掛けて選んだ。