• テキストサイズ

となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第33章 特別編:バレンタインキッス。



*scene2:無辺世界*



「火神くん!」
「あ?」

振り向くとそこには誰もおらず
代わりに隣に誰かの気配を感じた。
続けて下から声が聞こえる。

「はーよかった やっと追いついた」
「うわ!びっくりした…
どうしたんだよ 公野」
「いやークラスの女子で男子全員ににチョコあげる計画してて
私が火神くんに渡す担当だったんだけど
先帰っちゃうし雪降ってるしで大変だったんだよ」

息を整えながら話していた理由が分かった。
傘も持っていないみたいで 制服が所々濡れている。

「それでね 私バス通なんだけど
バス停屋根なくて濡れちゃうから
渡すついでにバス来るまで傘入れてもらおうかなって」
「は!?…まぁしゃーねぇか
バス停すぐそこだったよな」
「やった ありがとう!失礼しまーす」



バス停に着いたのはいいが あいあい傘になっていることに気づいてから
なんでか緊張してきていた。
そんな俺のことなんかつゆ知らず
公野がぽつりとつぶやく。

「こうして傘の中にいるとさ 世界から遮断されたみたい」

ね、と言って笑う。
前々から思ってたけど やっぱかわいい。

「火神くん傘から肩出てるじゃん!もっとこっち入って」

ぐい、と引っ張られ 公野の体が触れる。

「ちょ おま!離れろって!」
「火神くん濡らすわけにはいかないよー
あーそうだ これクラスの女子からね」

セロハンに包まれた小さなお菓子たちを受け取る。

「おー サンキュ」
「それからね
はいっ火神くん ハッピーバレンタイン!」



「?さっきもらったじゃねぇか」

「ちがくて これは私個人から」

そう言って渡されたのは ハート型の小さな箱。

「本当は学校で渡そうと思ってたんだけど
みんないるし誤解されたら面倒だしねー
部活がんばれーって意味合いだから!」

ほにゃ、と笑う目元に 少しあかい頬に
不覚にも心にひびいた。



恋なんて大層なものじゃないのかもしれない
公野にとっても 俺はただのクラスメイトなのかもしれない
でも今は、それでいい。



end**
/ 68ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp