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となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第33章 特別編:バレンタインキッス。



*scene1:シガレットチョコの煙*



冬空の下 いつもの公園のジャングルジムのてっぺん。
いつものように 彼女はそこに座っていた。

「公子っちー!」
「遅いわばか 風邪ひいたらどうしてくれるの」
「そうなったら俺がぎゅううっとハグを…」

俺が話そうとした続きは
彼女のハイヒールの踵に足を踏まれた痛さによって妨げられた。

「いっだ!ちょっとー何するんスかー!」
「そういうことは大人になってから言いなさい
子どもにそんなの言われても私の心はときめかないよ」

悪びれもせずにそう言い放ち 不敵に笑う彼女。
いつもこうやって俺のことを子ども扱いしてくる。

「…ずるいっス 少しだけ公子っちのほうが
たくさん生きてるだけっスのに…」



俺がむくれていると 彼女が
うーん、と軽く唸り始めた。

「どうかしたんスか?公子っち」
「んー 最近たばこ控えてるんだけど
なんか口寂しいなって」
「じゃあこれいるっスか?」
「…なにそれ おかし?」
「あれっ シガレットチョコ知らないんスか!」
「はじめて見た…」

俺が口に運ぶ様子をじいっと見る彼女。
本当は抱きしめたくてしかたがない でもまだダメだ。
そんでもって 男見せろ俺!



「…試してみる?」



何か言いかけた彼女の唇を
シガレットチョコを咥える俺の唇でふさいだ。



どれくらい時間が経っただろう。
きっと一瞬なんだろうけど 俺は永遠くらいに感じた。
ゆっくりと唇をはなす。

「おいしいっスか?公子っち」

よっぽどびっくりしたのか ぽかんとした顔をする彼女。
そんな彼女が この上なくいとおしい。

「ハッピーバレンタインっス 公子っち!」



子どもの俺になんかときめかないかもしれない。
なるべくはやく 急いで大人になるから
だからどうか その時まで
待ってて。



end**
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