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となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第33章 特別編:バレンタインキッス。



*scene5:チョコレート・ボマーの憂鬱*



速足で歩く公子の後ろを
私は小走りで追いかける。

「ちょっと公子!速いって」
「さつきが遅いんだよ
ほら夜になっちゃう 急げ急げバスケ部っ!」
「私マネージャーだから!」



中学から学校が一緒の友だちの公子につきあってもらい
私は『キセキの世代』の割と近所のみんなに
バレンタインのお菓子を渡してまわっている。

青峰くんには「エロ本ねーのかよ」って舌打ちされるし
ミドリンには「今日は牡牛座と相性が最悪なのだよ」って遠ざけられるし
きーちゃんには「黒子っちのところ行くんスか!?」って執拗に聞いてくるしで
みんな渡すのが大変だったから 日がすっかり暮れてしまった。

そして今はテツくんのいる誠凛高校に足を運んでいる。



「あ いた!」
「あーほんとだ 黒子くーん」

幾度となく目で追った バスケをするにしては小さめな背中が振り向く。

「桃井さん 公野さん」

「テツくうううううん!」

今までの疲れを忘れた私は全速力で駆け寄り
テツくんを ぎゅ、と抱きしめていたところを
公子に離される。

「苦しかったです 桃井さん…」
「もーさつきは…黒子くん
もう辺り暗いからさ さつきのこと送ってやってくれる?」
「いいですけど 公野さんもいっしょじゃないと嫌です」

ちくん、と心に何かが刺さったような感じがした。
そうだ 私がテツくんのことを好きなように
テツくんだって好きな人が…

「えー私はいいよ はは」

公子がこう言うと
テツくんは少し怒ったような顔で言った。



「ダメですよ 女の子なんですから
公野さんも桃井さんも 僕がちゃんと家まで送ります」



あぁ そうか、テツくんはこういう人だった。

「…ふふ」
「さつき?何笑ってるの?」
「ううん なんでもない
テツくんこれ 受けとって!」
「そっか 今日はバレンタインでしたね
ありがとうございます 桃井さん」

ありがとう、という言葉を聴いただけで
心の奥がほっとする うれしくなる。

小さくて 少し抜けてて
でもとびきり優しいテツくんが
今までも これからも
だいすき。



end**
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