• テキストサイズ

となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第32章 となりの赤司くん*back ground



「もしもし 俺だよ
公子 まだ起きていたんだね」

あの日から俺と彼女の関係は少しずつ変わっていった。
名字で呼んでいたのが名前になり
話をしたり 電話をしたりするようになった。



今日もいつものようにたわいもない話をしていたが 内心いつ話そうかとタイミングを窺っていた。
空っぽの部屋 手元には洛山の入学案内。

…言わねば。



「…」
「赤司くん?どうしたの?」
「…公子 俺は明日この街にいない」
「…え?」



そこから俺は できるだけ淡々と話をした。
公子を突き放すように わざと冷たく、あっさりと。

罪悪感と背徳感で背中のあたりがちくちくと痛んだ。



「…なんで言ってくれなかったの」
「すまない 公子が泣くんじゃないかと思うと言えなかった」
「なんでそんなっ…」
「泣かないでくれ 公子」



俺は本当に勝手だ。
公子を泣かせておいて こんなことまで言ってしまうのだから。

「落ち着いたらきっとまた会いに戻ってくる
だからそれまで待っていてくれ」



俺は静かに電話を切った。



時は流れ、ウィンターカップの全国大会の日が来た。

あれから公子と連絡を取っていなかったが なんとなくあのコートへ足を運んでみる。



ふと見ると、懐かしい人影があった。
また泣いて 仕方のない奴だ。



「やぁ 久しぶり」



人影がぴくりと動く。
少し伸びた髪の毛先が風に撫ぜられて ふわりふわりとゆれた。



「すまない こっちは忙しくてね
なかなか連絡できなかったんだ」



しゃくりあげながらの、少し拗ねたような声が聞こえる。



「…名前呼んでくれなきゃやだ」

思わず笑ってしまう。なんていとおしい、なんていじらしい。



言いたいことは色々あるが…
あふれんばかりの想いを この一言にのせよう。



「ただいま 公子」



近づいてくる影へ 俺は両腕をいっぱいに広げた。



end**
/ 68ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp