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となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第30章 となりの今吉くん*back ground



さっきから公子がずっと黙ったまんまや。


「どした公子 具合悪いんか?」
「いや?寒いなって思って…
あーほら 雪降ってきた」
「ほんまや まだ春は遠そうやなぁ」



春なんてこのまま来んでいい なんてすこうしだけ考えてしもうた。
バスケが好きで けど公子も大切で、両方を取ることなんて今のワシにはできん。それがたまらんほどもどかしい。



「…っくし!あー寒…平気か?公子」
「平気平気…っくしゅ」
「平気やないやんけ…ほら これ買ったるから飲み」

ホットコーヒーをこくりと飲む公子を眺める。
ふと目が合うた。

「…なに?」
「ん?ええよ 気にせんと飲み」
「できないから聞いてるの」

嫌がる顔が見たかったと嘘をつく。甘いものがあんま得意やあらへんこと、知っとるのに。

「相変わらずいい性格してんね
すきだよ そーいうとこ」

ワシかて公子のことがすきや。
そう言えたら、どんなにええか。



そんなことを考えとったら突然公子が泣き出してしもうた。

「ちょ なんで…」
「うーん…公子 泣いてちゃ分からんで?」

袖で涙を拭ってからワシは隣に座り、手をゆるく掴んだ。



「…分かってるくせに ばか」

すまんな 実は分かっとらんし正直めっちゃテンパっとる。
けど公子が泣いとるのは何よりも嫌なんや。

「馬鹿はないやろ馬鹿は…
公子 もうちょいこうしててもええか?」
「…なんでよ」
「…ワシかてな たまにはええかっこしたいんや
分かったら黙って手ぇ繋いどき」



公子の手は華奢で すこうし冷たい。
大切に大切ににぎらんと壊れてしまいそうや。

春が来たら自分の気持ちを言おう。
きっと、絶対、正直に。



end**
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