• テキストサイズ

となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第25章 となりの木吉くん*back ground



あの日から公子と会う機会はなくなった。
寂しいと思う反面 少し安心した。
まだだ あいつに会うのは
俺がもっと強くなってからじゃないといけない。



俺は高校2年生になり WC予選に出場していた。
今日の相手はあの霧崎第一。
けじめをつけるために 久しぶりに公子にメールを送る。

『WC予選中 これから霧崎第一と試合
 みんなを守ってくる』



霧崎第一やはり手強い相手だった。
花宮の汚いやり方にも屈せず 誠凛は勝った。

俺は みんなを守れたんだろうか。
一年前の試合がフラッシュバックする。

真っ白の頭に真っ先に浮かんだのは
公子の笑った顔だった。



公子から連絡があり 近所で会うことになった。

「よぉ公子 久しぶり」
「おつかれ」

「大丈夫だったの?かなり無茶したみたいだけど」
「きついときもあったけどさ でも…」
「でも?」

「嫌だったんだ 仲間が傷つけられるのを見ているのが」
公子を泣かせてしまうのが。



「嫌だった…」



忘れていたように涙が頬を伝う。
そうか これはあのときの涙だ。
一年もかかってしまったけど ようやく過去と決別することができた。



「大丈夫だよ」

「…ん」

「がんばったね」

公子の少し冷たい手が頬にふれる。
俺の背中をさすり 頭をなでられる。



本当は心のどこかで ずっとこうしてもらうことを望んでいたのかもしれない。

大丈夫、という言葉が胸の奥でやさしく溶ける。
がんばったね、という言葉が胸をこそばゆくさせる。

弱虫だと言われるかもしれない。
後ろ指を指されるかもしれない。

でも それでもいいと思えるほど
公子の存在に救われていたんだ。



end**
/ 68ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp