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となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第25章 となりの木吉くん*back ground



ゆらゆらと静かに時間が流れていた病室に
勢いよく開けられるドアの音が響いた。

「鉄平!」
「おぉ 来たなー公子」
「来たなーじゃないでしょばか!具合は?
どうしてなったの?バスケできるの?」

参ったな、と思った。
もうこいつに心配かけたくなかったのに やっちまった。

「ちょっと落ち着けって ちゃんと話すから」



少しかいつまみながら 俺は霧崎第一との試合での出来事を話した。
公子の表情はどんどん曇っていく。
途中で話を切ろうとしたが
公子の真剣な眼差しに拒まれた。



「花宮真…ほんっと下衆な奴ね 昔から大嫌い」

眉間にしわを寄せ 公子は
泣いているような 怒っているような複雑な顔をする。
人の不幸だって自分のものにしてしまう。
こいつは昔からそういう奴だった。

「公子はああいうタイプの奴は徹底的に嫌うよな はは」
「笑いごとじゃないよ!
どうするの バスケできないかもしれないんだよ!?
なんでそんな…笑っ…」

握りしめる公子の手の甲に涙がぱたぱたと落ちる。
あぁ やっぱり黙っていたほうがよかったのかもしれない。
でももし黙っていたら 公子はもっと泣くのだろう。



「公子が泣くことなんてないんだ
でも…ありがとな」

頬に伝う涙を拭ってから背中をさすり 頭をなでる。
すん、と鼻を鳴らしながら公子が口を開いた。

「鉄平は…ちゃんと泣いたの?」
「え?」
「だって1番泣きたいのは…」
「さぁどうかな もう覚えてねーや」
「そうやっていつもごまかして…」

公子の言葉を遮るように
面会時間終了を告げるアナウンスが流れた。

「悪い 今日はもう帰ってくれ」
「でもっ…」
「大丈夫だから な」
「…うん」
「サンキューな 公子」

ゆっくり遠ざかる背中にそう声をかける。
返事はなく ただすすり泣く声が聞こえた。



公子を泣かせて リコも泣かせて
誠凛のみんなに迷惑かけて
そのくせ涙を見せない自分に失望する。

このままじゃいけない、と思った。
今までかけた心配も 迷惑も
俺のために流された涙も
全部背負って守れるようになりたいと思った。

今の俺に 泣くことはまだ早すぎる。



to be continued**
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