第20章 となりの緑間くん*back ground

｢狭いよーう 真ちゃんもうちょいスリムになってよ｣
｢入れてもらっている分際で何を言っているのだよ 大馬鹿さん｣
｢まだ引っ張るかそれ！真ちゃんそれ実は気にいってるんでしょ｣

雨の音の響く住宅街を 俺と公野は
ひとつの傘に入って歩く。



｢これってあいあい傘だよね！｣

…すごくびっくりした。
突然叫んだりして 本当になんなのだよこいつは。

｢それがどうかしたのか｣

俺がそう言うと公野は唇をつんとさせた。

｢…別にどうもしないのだよ｣
｢…俺の真似をするな そしてあからさまに拗ねるな｣
｢拗ねてないのだよ｣
｢…｣


俺は傘を公野の頭上で傾けた。
こう焦らされるのは嫌いなのだよ。

つっめった！ときゃんきゃん吠えながら怒る公野を

俺は黙れと制しながら続ける。

｢あまり大馬鹿さんでいるのは感心しないのだよ 訳を話せ｣
｢っ…真ちゃんは 私なんかとあいあい傘して
いやじゃないの？｣

…ばかなのか、と思った。
俺がどんな気持ちでお前を誘ったと思っているのだよ。
本当に公野は馬鹿だ。
馬鹿で 放っておけない。

｢嫌な訳ないのだよ お前は女だ
女性を夜に一人で帰らせるほど俺は馬鹿ではないのだよ｣

突然公野は歩みを止め 雨の中立ちつくす。

｢何をしているのだよ 濡れるからはやく入れ｣

俺は公野の手をとり傘の中へ引き寄せた。
自分の手が冷たいからか #NSME2#の体温が心地いい。

｢…真ちゃん｣
｢何なのだよ｣
｢もし私が傘なくて困ってたらさまた真ちゃんの傘入れてくれる？｣
｢？当たり前なのだよ｣

｢そっか… へへ｣



くしゃ、と笑う顔を見て
安心する自分がいたことに俺は驚いた。
それを悟られないように話を続ける。

｢それに｣
｢え？｣
｢馬鹿は風邪をひかないとよく言うが間宮は大馬鹿だ
雨にあたったら一周まわって風邪をひくのだよ
お前が風邪をひいたら俺にもうつる可能性があるからひかせるわけにはいかないのだよ｣
｢あ こら真ちゃんてめええええ！｣



公野に顔を見られないよう横を向く。
自分で分かるくらい顔が熱い。

どうしようもないくらい
俺は公野に惚れているのだ、と
今なら分かるのだよ。



end**