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となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第19章 となりの黒子くん*back ground



「やっと書き終わったー…あとは名前だけだね」
「すみません 結局全部書いてもらってしまって」

時計の針が進むにつれて
窓から見える空の色も暗みを帯びてきました。

「黒子くんの下の名前ってなんだっけ?」
「テツヤです 片仮名でテツヤ」
「テツヤ…と よしっ」

公野さんに呼ばれるだけで
慣れ親しんでいた自分の名前が新鮮に聞こえました。
それと なんだかこそばゆいです。



んんー、と言いながら伸びをする公野さんに
少しお返しをしてみることにしました。

「間宮さんは」
「え?」
「間宮さんは下の名前なんていうんですか?」

公野さんはびっくりした顔をしました。
そんなに急だったんでしょうか。

「え 千昭だけど…」
「そうですか 千昭さん…」

本当は下の名前だって知ってます。
でも初めて声に出す公野さんの名前は
彼女にぴったりで あたたかいな、と思いました。



「なんかこそばゆい」

うなじを両手で押さえながら
公野さんは照れたように口元をゆるめながらつぶやきます。

「そうですか?」
「あれ 私だけ?」

そんなことありません 僕だってこそばゆかったです。
けどその言葉はのどの手前まで出かかって
心の奥に戻っていきました。



「続きは廊下で話すとして
はやく出しに行っちゃいましょう 千昭さん」

そう言って荷物と日誌を持って廊下へ向かう僕の背中を追って
公野さんも自分の荷物を持ちます。

「! ちょっと待っ 重っ!」
「遅いですよー 千昭さん」
「もう こそばゆいんだってば!
笑ってないでたすけてよ!
わ 待って置いてかないでー!」


ちゃんと待ってますよ、と言っているのに
よろめきながら一生懸命走ってくる公野さん。
彼女のそんなところが 僕にとってとてもまぶしくて
見ていておだやかになります。

日はとっぷり暮れました。
さぁどう言ったら僕に送られてくれるかな、と考えながら
僕は公野さんと並んで廊下を進むのでした。



end**
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