• テキストサイズ

となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第17章 となりの青峰くん。



「青峰くん?青峰くーん」

彼を呼ぶ私の声は 昼休みの雑踏がかすかに聞こえ
初夏の日差しが降り注ぐ屋上の空気に溶けて消える。

「ここにいるはずってさつき言ってたんだけどなぁ…」



青峰大輝くんと桃井さつきは 私の通う高校の同級生だ。
二人とも同い年とは思えないほど立派に育っていて
隣を歩くのがたまに恥ずかしくなるけど
二人ともだいすきで大切な友だちだ。

夏風邪をひいて学校を休んでいるさつきのところへ
青峰くんとお見舞いに行こうと思って誘いに来たのだけど
彼を迎えに行くのはさつきの役目なので場所の見当がつかず
私は必死になって探していた。



「あ いた」

屋上の上に立つ建物の屋根にあたるところで
青峰くんは眠っていた。

起きるのを待っていたら日が暮れてしまうかもしれない。
さっそく起こしにかかる。

「青峰くん 起きて?」



軽く体をゆするけど 全く起きる気配がない。



「しょうがないなぁ…」

ほっぺを軽くつねってみる。

「ん…」

ぴくっ、と一瞬動いたが
すぐにまた寝息を立て始める。

「…大ちゃーん」

ふざけてたまに呼ぶ呼び方で呼んでみる。
動かない。
まぁ 当たり前だよね。

「困ったなぁ どうし…きゃあ!」



体育座りをしていた私の腕が突然引っ張られ
青峰くんのすぐ隣に倒された。

びっくりして正常に働かない頭で考えながら
必死に声に出す。

「ちょ 青峰くん…!?」


やっとのことで彼の腕の中から頭を出した。
青峰くんの吐息がそばで聞こえる。



「公子…」



あまりにも大事そうに
しあわせそうに私の名前を呼ぶ彼の声に
私の体は不覚にも動きを止める。

そこで 午後の授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。

「青峰くん 授業…」

もちろん返事はない。


生まれて初めて授業をサボってしまった。
授業中に見ることのなかった晴天の昼の空には
うすいひこうき雲がたゆたっていた。



to be continued**
/ 68ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp