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となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第17章 となりの青峰くん。



青峰くんが起きるのを待ちながら
私はぼんやりと午後の空を眺めていた。
もうすぐ午後の授業もすべて終わる。



「あ あの雲ねこみたい」

「どれがねこだって?」

私がくすくす笑っていると
いつのまに起きたのか 青峰くんの声が聞こえた。



「青峰くん!起きてたの!?」
「ふあ…ん なんだよ公子じゃねぇか」

言いながら眠たげな目をこする彼の様子を見たところ
起きたのはついさっきみたいだ。

「起きたんならはやく授業戻っ…」
「あ?別にいいじゃねぇか もう少しこのままいようぜ」

両腕で私を抱きしめて離さない青峰くん。
私のことを抱き枕か何かだと思っているんだろうか。

「ちょ やめてって!暑い!」
「るせぇな ちったぁ黙らねぇと食っちまうぜ」
「!」

瞬間口をつぐむ私。

「そうそう やればできんじゃん」

にっ、と不敵に笑う青峰くん。
こういうとき 彼はずるい。



「あのね さつきが夏風邪ひいちゃったから
一緒にお見舞い行きたいんだけど」
「あ?やだよめんどくせぇ」
「まーたそういうこと言う さつき寂しがるじゃん」
「別に寂しくねぇだろ」
「もう分かってないなぁ そんなだからモテないんだよ」
「るせぇな!いつか巨乳の女が俺の前に…」
「今のはかなりイタいよ大ちゃん…」
「っ…眉をひそめんな!」

腕を振りほどけないまま
こんなくだらない話をだらだらする私たち。
さつきがいないとこんなに締まらないものなのか、と思うと
途端に寂しくなってきた。

「ん?どした公子」
「さつき…」



「…しゃーねぇなぁ んじゃ行くか」

のびをしながら青峰くんが立ちあがった。

「何してんだよ さつきのとこ行くんだろ?」
「今から?でも青峰くん部活…」
「さつきいねぇと俺が来るなんて思われねーよ 心配ねぇ」
「いや心配とかじゃなくて…」
「ほらはやく立てよ 襲っちまうぜ」
「!やだやだやだ!はーなーしーてっ!」
「手ぐらいいいじゃねぇか ガード堅ぇなぁ」

楽しそうに笑う青峰くんに手をひかれる私。
本気で嫌がれないのが我ながら悔しい。
でも まぁいいか、なんて思ってしまう
青峰くんは そういう人なのだ。



ねこの形をした雲はいつのまにか遠い空へ流れていた。
新緑のにおいをまとった風が
私たちの間をすりぬけていった。



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