• テキストサイズ

となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第15章 となりの若松くん。



「はぁ…次は負けねぇからな!」
「ここまで来るともう才能だね じゃあ次いって…」

言いかけた口が止まる。
途端 足がすくみだす。

「公野?どした?」
「や…」
「お わんこいるじゃねーか!
って公野 もしかしてお前…」
「やだ…」

足元にはあどけない顔をした仔犬。
小さい頃に噛まれてから 私は犬が怖くなってしまった。
こんな小さな犬でさえも…



「…ったくしゃーねぇな」

若松がそう言うや否や 私の足が地面から離れ
代わりに地面がぐっと近づいた。

「ちょ!なにやって…きゃあ!」
「じっとしろって!このまま走るぞ!」
「ちょっと待って 待ってってば!」



「死ぬかと思った…」
「大げさなんだよ もうちょい感謝しやがれ」

言いながら若松は両腕をマッサージしていた。
片腕で私と自分の荷物を持ち もう片腕で私を抱えていたんだ
しんどくなるのも無理はない。

「…ごめん」
「なんで言わねぇんだよばか!あーもう泣くな!」

色々な感情が混ざり合って 自然と涙がでてくる。

「怖かった…」
「…しゃーねぇな ほら」

そう言って若松の胸元に顔を押し付けられる。



「怖かったんだろ?だったら涙止まるまで泣いちまえ」



頭をぽんぽんする若松の大きな手。
かすかに聞こえる鼓動。

こんなに素直に人に甘えられたのは
生まれて初めてだった。



「さっきはごめん かっこわるいところ見せて」
「あ?謝んなよ 別にお前悪くねぇし」
「…ありがと」

にっ、と笑う若松。
さっきまでこいつの胸にいたんだと思うと
顔があつくなる。

「まぁこれであれだな」
「あれって?」
「お前の弱点見抜いてやったぜ へへ」
「…くそ野郎」
「はぁ!?」



まともに若松の顔が見られない。
心臓がうるさくてしかたがない。

ばかで単純で とびきり幸せそうに笑う若松が
どこまでも眩しい。



end**
/ 68ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp