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となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第14章 となりの赤司くん。



「もしもし 俺だよ
公子 まだ起きていたんだね」
「赤司くんが起きてなさいって言ったんだから
起きてなきゃ明日が怖いよ せっかくの春休みなのに」

あの日以来 少しずつ赤司くんと距離が縮まり
一緒におしゃべりをしたり こうして電話するようになった。


「…」
「赤司くん?どうしたの?」

「…公子 俺は明日この街にいない」

「…え?」

そうして赤司くんの口から告げられたのは
彼の進学先が京都にあるバスケの強豪校だということ
そして明日の早朝にそちらへ向かうということだった。



「…なんで言ってくれなかったの」
「すまない 公子が泣くんじゃないかと思うと言えなかった」
「なんでそんなっ…」
「泣かないでくれ 公子」

赤司くんは本当に勝手だ。
なんでも一人で決めて 誰にも相談なんかしない
静かに線を引かれた側の気持ちなんか 知りもしないで。



「落ち着いたらきっとまた会いに戻ってくる
だからそれまで待っていてくれ」



その言葉を最後に通話が途切れた。



あの日から10カ月ほど経った。

赤司くんからの連絡はなく
私は一度携帯を壊してしまって連絡先がすべて消えてしまい
赤司くんと連絡をとることができなかった。

散歩中に なんとなしに
初めて言葉を交わしたこのコートに足を運んでみたが
彼のことばかり思いだして
忘れたと思っていたのに 涙がとまらない。



「やぁ 久しぶり」



背後から声が聞こえた。
涙で潤む視界では はっきりと姿をとらえられない。

「すまない こっちは忙しくてね
なかなか連絡できなかったんだ」

新しい涙が頬を伝う。
しゃくりあげながら 私は声をしぼりだす。

「…名前呼んでくれなきゃやだ」

くす、と笑う声。
冬のやさしいこもれびが彼の声ととけあう。



「ただいま 公子」



end**
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