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となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第14章 となりの赤司くん。



彼の気まぐれだったのか
それとも私の妄想だったのか
そんなふうにときどき思う。

二度と会えないかもしれない
もう名前を呼んでもらえないかもしれない、

だけど それでもどうしたって私は
彼のことを忘れることなんてできない。

赤司くん あなたのことが
たまらなくいとおしい。



中学3年生のとき 塾の帰り道にあるバスケットコートで
同じクラスの赤司くんを見かけた。

彼の持つボールが手から離れたかと思うと
ボールはきれいな弧を描いてゴールに入った。

「…きれい」

無意識にそう口に出していた。
私が見ていたことに気づいたらしい赤司くんは
まっすぐ私の方に歩いてきた。

「わ 赤司くん…こ こんばんは!」

緊張と驚きで口のまわらない私とは違い
赤司くんの口調は普段と変わらず落ち着いていた。

「やぁ公野」

話題が途切れる。
繋がなければと焦っていたせいか
私は思ってもいないことを言っていた。

「…あのっ 赤司くん!」
「何だ?」
「あの 私…
ここで見ててもいいですかっ!」

断られる、引かれる、
そう思っていた私の予想は大きく外れた。



「構わない。
そこだと通行の妨げになって危険だから 中へ入ってくるといい」



思考が停止し立ちすくむ私を見た赤司くんが
フェンスの外まで出て 私の手を取り引いていた。

「ちょ 赤司くん!?」
「危険だと言ったじゃないか 歩けるか?」
「だ 大丈夫です…そうだ 手!ごめんなさい…」

手を離そうとしたはずなのに
私の手はふりきれない。

「赤司くん?」



「小さい手だな…」

そう呟く赤司くんの手はすこし冷たく
顔には少しだけ笑みがうかぶ。

クールな顔しか知らなかった私には
不覚にも彼のやわらかい表情に
ときめかずにいられなかった。



to be continued**
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