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となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第12章 となりの今吉くん。



「…」
「どした公子 具合悪いんか?」
「いや?寒いなって思って…
あーほら 雪降ってきた」
「ほんまや まだ春は遠そうやなぁ」



来年度の話のときから感じたもやもやが
頭からついて離れない。



「…っくし!あー寒…
平気か?公子」
「平気平気…っくしゅ」
「平気やないやんけ…ほら これ買ったるから飲み」

そう言いながら 翔一は自販機でホットコーヒーを買って私に渡す。

「え いいよ自分で払う」
「えーからえーから たまには黙って奢られとき」
「…じゃあ いただきます」

もらったコーヒーを飲む私を
なんでか翔一がガン見をしてくる。

「…なに?」
「ん?ええよ 気にせんと飲み」
「できないから聞いてるの」
「…まぁええか 実は嫌がる顔が見たくて無糖買ったんやけど
公子無糖飲めるんやなーって」

まぁそんなことだろうと思っていたんだけど。

「相変わらずいい性格してんね
すきだよ そーいうとこ」
「っはは かわええ顔して何言ってるんや
公子も大概やないか」

からからと笑う翔一。
この笑顔を たまに見せる腹黒さを
ひとりじめできたら、って
今まで何度考えたことだろう。



「ちょ 公子どした?なんで泣いて…」
「え?」



自分で気づかなかったほど静かに
私は泣いていた。

「ちょ なんで…」



原因なんて分かってる
分かってるのに いつも知らないふりをしてきたのは私だ。
そして私が言わまいとするその内容を
私が言わなくても分かってしまうのが 今吉翔一という男だ。

「うーん…公子 泣いてちゃ分からんで?」

そう言いながら翔一は私の隣に座り
まだコーヒーの入っている缶を握る私の手をゆるく掴んだ。

「…分かってるくせに ばか」
「馬鹿はないやろ馬鹿は…
公子 もうちょいこうしててもええか?」
「…なんでよ」
「…ワシかてな たまにはええかっこしたいんや
分かったら黙って手ぇ繋いどき」

雪はまだ降りやみそうにない。
でも それでももうすぐ
もうすぐ、春が来る。



end**
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