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となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第10章 となりの火神くん。



「ふいー終わったー!
お粥も作れたし 私ってば天才!」

日もとっぷり暮れた頃 私は諸々支度をしてから
寝ているであろう火神くんのところへ向かった。



「あれ まだ寝てる」

前に部屋を出てから結構時間が経っていたけど
彼はあれからずっと起きていないようだ。

なんとなしに枕元の前に行って
眠る火神くんの顔をながめていた。
授業中に眠る姿はよく見るけど
こうして横になるのを見るのは初めてで
どことなく緊張する。



「ん…」


静かにうなる声が聞こえて
彼の首筋を滴る涙を拭いてから
私の手が自然に彼の頬に伸びていた。
そして私は小声で囁く。

「大丈夫 私がいるよ
だから泣かないで…」



その直後 火神くんの手によって引き寄せられ
次目を開けたとき 私は彼の隣で横になっていた。

「わ!びっくりした…
火神くん起きたの?」

返事がない。

「ねぇちょっと 火神く…」

言いかけたところで ぎゅ、と抱きすくめられる。

「ちょ 火神くん!?」



「あったけぇ…」



「え?」

聞き返すと再び寝息が聞こえ始めた。
驚きと恥ずかしさで心臓がうるさい。
いくら呼んでも 火神くんの返事がない。



「…あーもう!」



私は起きたときのことを考えるのを止めた。
引っ張ったのは彼なんだし
もし責められたとしても いくらでも言い返せる。

実は 私が腕の中から抜け出さなかったのは
今日はこのままいてあげてもいいかな、
なんて思ったからというのもあるのだけど
その思いは私の中だけにとどめておこう。



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