第10章 となりの火神くん。
少し ほんの少しだけ緊張しながら
私は目の前のインターホンを押す。
少し間があって 扉が重たげに開いた。
「…公野?」
「こんちは火神くん!ふとどき者でーす!」
火神大我くんは私と同じクラスの人だ。
今日は彼は風邪をひいたらしく休んでいたのだけど
そこそこ仲が良いし家が近いしという理由で 担任にプリントを持たされたので
ついでにお見舞いにやって来た。
「…それさ お届け物じゃねーの?」
「え?そう言ったじゃん」
「いやさっき絶対…」
「まぁ細かいことはいいじゃないか
それより具合どう?熱は?」
そう言いながら彼の家に上がり込んだ私は
さっそく部屋の見物を始める。
「あー熱は38度いかねーくらい…
っておい!何棚の上いじってんだ!」
「いいねーこの写真 黒子くんたのしそう!
バスケ部で撮ったの?」
「そうだけど…ていうか悪ぃ
もう立ってるのしんどい…」
と 私の肩に頭を乗せる火神くん。
「ちょ!だいじょぶ?
ごめんごめん 火神くん寝てていいから
お布団行こう?」
「おー…」
「わ 泣かないで!しんどいのは分かったから!
ほらほら一緒に行こう 大丈夫大丈夫」
なんとかお布団に火神くんを連れて行った。
身長あるしがっちりしてるしで
正直支えてる私がつぶれるんじゃないかと思った。
そんなこと今は絶対言えないけど。
「悪ぃ…」
「いいよいいよ 来たついでだし看病させて!
氷枕作ってくるから 火神くんは寝ててね」
「ん…」
もうすでに彼がうとうとしていたので
会話もそこそこに私はキッチンへ向かった。
すぐ怒って 叩かれるとすごい痛くて あと眉毛が変で。
そんな普段の火神くんを知っているから
柄にもなく今の彼を心配してしまった。
弱ってる火神くんだと
なんだか調子が狂う。
to be continued**