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となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第7章 となりの木吉くん。



あれから私と鉄平は会うことがなくなった。
あの日以来顔を合わせるのが気まずくなってしまって
私は鉄平のお見舞いに行くことはなかった。



月日は流れ 高校2年生の秋
約1年ぶりに鉄平からメールが来た。

『WC予選中 これから霧崎第一と試合
 みんなを守ってくる』

その文で鉄平がしようとしていることが全て分かった。
私はすぐに出かける支度をし 予選会場へ向かった。



会場に着いたのは試合の終わってからだった。
もうコートに選手たちはいない。
まだ出されていたスコアを見る。

誠凛 勝ってる…
鉄平は チームのみんなを守りきったんだ。

うれしい、
ただただ それしか考えられなかった。



試合に間に合わなかった旨を連絡したら
お互いの家の近所の公園で会うことになった。

「よぉ公子 久しぶり」
「おつかれ」

にっ、と笑う鉄平。
私がつくった溝だって 鉄平は簡単に飛び越えられる。



「大丈夫だったの?かなり無茶したみたいだけど」
「きついときもあったけどさ でも…」
「でも?」
「嫌だったんだ 仲間が傷つけられるのを見ているのが」
「鉄平…」
「嫌だった…」
そう言う鉄平の頬に 静かに涙が伝った。

「大丈夫だよ」
「…ん」
「がんばったね」

鉄平の涙を拭ってから
私はあの日してもらったのと同じように
背中をさすり 頭をなでる。



あの日からずっと考えていた。
私では何ひとつ鉄平の力になれないんじゃないかって、
私にはなんにもできないんじゃないかって。

でも今こうして涙を拭える。
「大丈夫だよ」って言える。
頭をなでられる。

それだけで私は 涙が出るくらい
うれしい。

私にもできることがあったよ、鉄平。



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