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となりの彼。【黒子のバスケ短編集】

第7章 となりの木吉くん。



「鉄平!」

全速力で走って開けたドアの先には
いつもの飄々とした笑顔があった。

「おぉ 来たなー公子」

「来たなーじゃないでしょばか!具合は?
どうしてなったの?バスケできるの?」
「ちょっと落ち着けって ちゃんと話すから」



木吉鉄平と私は中学のとき バスケ部で選手とマネージャーの関係だった。
プレイはもちろん 鉄平の仲間思いで屈託のない性格に
バスケのことなんて何も知らなかった当時の私は魅せられバスケ部に入部し
卒業した今でも鉄平の活躍はあちこちで耳にする。

そして私は鉄平から試合で何が起こったかを聞いた。
トーナメント表を見たときから薄々嫌な予感はしていたけど
よりによって今の時期に鉄平の膝を壊されるなんて…



「花宮真…ほんっと下衆な奴ね 昔から大嫌い」
「公子はああいうタイプの奴は徹底的に嫌うよな はは」
「笑いごとじゃないよ!
どうするの バスケできないかもしれないんだよ!?
なんでそんな…笑っ…」

何もできない悔しさともどかしさが混ざり合って言葉にならない。

「公子が泣くことなんてないんだ
でも…ありがとな」

そう言って鉄平は私の頬に伝う涙を拭い
背中をさすり 頭をなでた。

この大きな手で ついさっきまでボールを持っていたんだ。
本当にバスケが好きだから 続けられないかもしれないなんて
そんな診断聞いて 平気でいられるわけない。

「鉄平は…ちゃんと泣いたの?」
「え?」
「だって1番泣きたいのは…」
「さぁどうかな もう覚えてねーや」
「そうやっていつもごまかして…」

言いかけたのと同時に 面会時間終了を告げるアナウンスが流れた。

「悪い 今日はもう帰ってくれ」
「でもっ…」
「大丈夫だから な」
「…うん」
「サンキューな 公子」



今の私が何を言っても
鉄平の心に響かせることなんてできない。

泣いたって何も変わらないのに
その日の私は涙を止めることができなかった。



to be continued**
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