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依存愛-彼と過ごした3000日-

第2章 朔


目を閉じて早口でまくし立てたセリフに。
首筋にあてられていた唇と舌の動きが止まった。



「……………いつ、するの?結婚」



シンクについたままの両手に、知らずに力が入る。


少しだけ、空いた間。

に。
振り返ろうと首と顔を動かした、瞬間。


「もう、した」
「え」


低く呟かれた言葉。
その意味を問いかける前に、振り向きかけていた顔を強引に支えられて。
唇が、重なった。


「…………………んぅ……っ」


なんにも考えらんなくなるような、深いキス。
違う。わざと、なんにも考えらんなくしてるんだ。
花が余計なこと考えないように。



だって。


『もう、した』


って。
もう、結婚した、って、ことだよね?



「しーちゃんっ、待って。もうした…………って……っ」


無理な体勢からの深いキスに呼吸が苦しくて。
思い切り顔を反らして、唇から逃げたついでにしーちゃんと、向き直る。

だけど。

言葉を紡ぐ前にまた、口内を蹂躙するしーちゃんのキス。
今度は片手で顎を持たれて、顔を動かすのさえ叶わない。


呼吸が出来なくて。
苦しくて。
勝手に涙が溢れてくる。




唇が離された頃には。
自分で立ってられないくらに、もうなんにも考えらんなくなってた。





「花」

いつのまにか、気付けばベットの上で。
見上げたしーちゃんの顔は、いつもと全然変わらない笑顔。

しーちゃんの瞳にうつる花は、しーちゃんと同じように、笑ってた。


笑ってた。

私、笑えるんだ。

しーちゃんといるだけで、ちゃんと笑えるんだ。

すごいな。

花は、いつのまに心にまで嘘をつけるようになったの。



首筋に吸い付くしーちゃんの髪の毛が、ふわふわしてて。
くすぐったい。
絡まった両手から感じる温もりが、心地いい。

だけど。


見上げたいつも見ている天井は、歪んでいて。
よく見えない。

両手から感じる温もりは暖かいのに、指先の血液は冷えきっている、感覚。

いつも感じるしーちゃんの重みも、今は感じない。


「しーちゃん、もう止めよう?」
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