第2章 朔
もう。
自分でも泣いてんのか笑ってんのか、区別出来ないや。
「花、ほんと頭の中しーちゃん中心に回ってるみたい」
うつむいたままの口元から漏れるのは、自嘲的な笑み。
だけど瞳から溢れるのは、間違いなく涙。
「すごいね、澪。花にはその考え、まず浮かばない」
「あたしは花と違って結城が嫌いだから」
「…………どうしたらそこまで嫌えるの?」
「は?」
「どうしたら、花もしーちゃん嫌いになれる?」
「逆にここまで裏切られて、どうして嫌いになんないの?」
「花ね」
うつむいたまま、声が震える。
「安定期なんて入らなければいい、って思った」
流れてるのはたぶん涙。
だけどどーしてかな。
私、笑ってる。
「花ね、本気で思ってたんだよ」
ずっとずっと頭の中にある。
悪魔の囁き。
離れないの、消えないの。
「りゅ………」
「言っちゃだめ花」
「……………」
「その先は、言っちゃだめだよ」
「…………………っ」
顔、あげらんない。
涙が止まらない。
震える唇をぎゅっと噛んで、漏れそうな嗚咽を噛み殺した。