• テキストサイズ

依存愛-彼と過ごした3000日-

第2章 朔


「花」



じめじめとした梅雨に入った6月後半。
だいぶ、うーん、なんとか、仕事にも慣れてきた。



「久しぶり、澪」
「うん」



配属されたところが違う澪とは、こーして外で会うのはたぶん、1ヶ月ぶりくらい。



「仕事どぉ?」
「なんとか、やってます」
「忙しいよね、ほんと学生時代が懐かしいー」




適当に、ショッピングを楽しんで。
ランチして。
またショッピングして。
ついでにお茶するために入ったカフェでは、すでに1時間以上が経過してる。
まぁ、女の子のお出かけなんてこんなもん。
適当に、ぶらぶら。
これ基本ね。


「ねえ花」
「んー?」


おかわりしたホットコーヒーに視線を落としながら、澪のいつになく真剣な声に顔を上げると。
澪のまっすぐな視線が、花を見据えてる。


「…………………澪?」


「花、結城とはまだ続いてんの」


「……………なんで?」


無表情なその顔と、声に。
自然とこっちまで顔が怪訝に歪む。



「結城、結婚するんだよ」






「………………」




彼から、聞いたんだ。
しーちゃん、亘くんにも話したんだ。



『安定期に入るまで、誰にも言わないで』



しーちゃんはそう、気まずそうに視線を反らしながら花にも口止めした。
年下の彼女の体を、気遣って。



そっか。
安定期、入ったんだ。





「知ってる」
「え」
「しーちゃんから直接、聞いたから」




ほんとはね。
ほんとは。



心の中で。
頭の、中で。



悪魔がずっと、囁き続けてる。




「……………安定期入ったんだね」




悪魔の囁きを払拭したくて。
口に出して復唱してみても。
消え去るどころか真っ黒い感情が大きくなっていく。



「花」



『俺と結婚したいみたい』
『プロポーズされんの、待ってんじゃね?』




だってタイミング、良すぎない?


『ちゃんと、別れるから』



「花」




『修、辛そうで』



『花が好きだよ』



「花ってば!」


/ 256ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp