第2章 朔
違う。
そうじゃない。
「花?」
「今日しーちゃん、ずいぶん構うね」
「?」
「会ってすぐ、あんな、抱くし。ずっとそばにいてくれるし。終わるとすぐ、タバコ吸いに行くじゃんいつも」
「――――――どんだけ最低なの、花の中で俺」
苦笑しながら。
しーちゃんは花を跨いで。
しーちゃんの体重の重さが、やっぱり心地いい。
「今日は、優しいなって思っただけ」
最低なんて思ってないよ。
花の顔の真横にしーちゃんの腕が置かれて。
あたしも、しーちゃんの首に両手をまわして目を閉じた。
だけど。
「結婚する」
短くそう、告げた唇は。
次の瞬間には花の唇に触れていた。
一瞬。
言われた意味がわかんなくて。
放心状態。
結婚?
誰が?
今、花の口内を動き回る舌は、誰のもの?
キス、するつもりだったよ。
だけど。
キスするつもりでまわした両手の力は脱力。
キスするつもりで閉じた瞳は、まばたきひとつ、動かせない。
「……………ごめん花、子供が出来た」