第2章 朔
雨、だったね。
空には太陽なんてずっと出てなくて。
夜になっても月は私たちを照らしてくれることなんてなかった。
そう。
太陽どころか、月までが花を見放したんだ。
あれはそう。
雨の日だったよね。
「しー、ちゃ…………、もう、や…………っ」
「花」
激しさをます動きに耐えきれなくて、逃げ出そうとする花を引き寄せて。
彼は呼吸さえも奪うような口付けをひとつ、くれると。
薄い膜越しに、欲を花の中に吐き出した。
「…………髪、延びたな」
心地いい怠さに酔いしれて、しーちゃんの腕の中、閉じていた瞳をゆっくりと開く。
「振られてから切ってないもん」
そのまま横にあるしーちゃんの顔を見上げれば。
「……………振った、っ、け?」
気まずそうに反らされる、視線。
「『友達以上には、花のこと見れない』」
2ヶ月目のバレンタインデー。
頑張って作った手作りのチョコを渡す前に、しーちゃんは花にそれだけ残して行っちゃったんだよ。
「よく覚えてんね」
「忘れないよ」
ぐりん、て。
体を回転してしーちゃんに背を向ける。
「見る目ねぇな、そいつ」
「だね」
そのまま、シーツに流れる長い髪を1束手に取ると。
しーちゃんはそれに口付けた。
「シャンプー変えた?」
「……………」
「なんか、怒ってる?」
「……………」
「花」
ぐい、って。
髪の毛を力任せに引っ張られれば、右を向いていたはずの体は簡単に仰向けになり。
真上には、しーちゃん。
「なんかした?俺」