第2章 朔
にっこり笑って冷蔵庫に寄り掛かるしーちゃんを、複雑な表情で見つめてみた。
「変な顔」
「さっき、電話あったよ?」
たぶん、彼女。
ニコニコ笑うしーちゃんの表情が、一瞬だけ、崩れた。
でも。
「そう」
すぐになんでもないように戻る、表情。
そんな風に笑顔で誤魔化されないよ?
しーちゃんの肩についてるキスマーク、花が気付かないと思った?
「かけ直さなくて、いいの?」
「いいよ」
どんどん欲張りになってく。
なんで、彼女に嫉妬してるの。
もともと、しーちゃんは花のものなんかじゃないのに。
嫉妬なんてする事自体、間違ってるのに。
「はな?」
だから、その笑顔反則。
冷蔵庫に寄り掛かるのはそのままに、少しだけ屈んだしーちゃんは、ゆっくり瞳を細めて。
花と視線を絡めてくる。
「おいで?」
甘い、声。
「ぎゅって、してあげる」
そんな声、どこから出してるの?
花がしーちゃんの声に弱いの、わかっててやってる?
「ん、いい子だね、花は」
引き寄せられるようにしーちゃんの胸の中におさまった花を、言葉どーりぎゅって、抱き締めてくれた。
「しーちゃんは、ずるいね」
「………………そうだね」
「ずるいし、卑怯だし、嘘つきだよ?」
「でも、好きなんでしょ?」
「……………………」
「嫌い?」
「……………な、わけ、ないじゃん…………っ」
好きだから、こんなに辛いのに。
こんなに、苦しいのに。
「大丈夫だよ、ちゃんと別れるから」
「………………うん」