• テキストサイズ

依存愛-彼と過ごした3000日-

第2章 朔


「これが、強引ってゆーの」

涼しい顔して笑うしーちゃんを、ひとにらみ。

「苦しそうにしてる花も可愛かったけどな。ああこれ、これもはまるかも、俺」
「?」
「苦しそうに耐えてる花のチュー顔」

な………っ!

ぼんっ、て。
効果音つきの湯気が頭から出たきがするよ。

「………変態っ」
「だから、花にだけだってば」

ぽんぽん、て。
右手を頭の上におくしーちゃん。



「全部、俺が教えたんだよ」
「え?」
「キスの仕方も、男に媚びる方法も。全部、俺が教えた。こんな風に女の顔ができるまで、俺が育てたんだよ」
「え?」

目一杯しーちゃんを見上げる花の唇を、しーちゃんの親指がなぞると。
また、先ほどの体温が甦る。
「花は、俺が女にしたんだよ」

頭ごと抱き寄せられると、ほっぺたがしーちゃんの胸にくっついた。


「怖くなくなるまで、言ってやるよ」
「なにを?」

「花、愛してる」

耳元で囁かれた言葉が、心臓をひと突きに貫く。

「聞こえた?」

突き刺されたままの心臓が、動きを再開するまで。
一瞬時間がほんとに止まったかと、思った。


「………………聞こえない」

「じゃ、もう1回?」



ふわっと微笑んだしーちゃんの視線が、優しくて。
瞳が、優しすぎて。


「愛してる、花」

はじめてみる表情に。

涙が溢れた。


「だから、なんで泣くの」
「違うっ、勝手に、出てくるの」

慌てて両手で涙を拭うと。
そっと両手をもたれて。


「せっかくかわいいメイクしてんのに、擦ったら落ちるだろ?」

って。

自分の人差し指で、優しく涙を拭ってくれた。



「だってしーちゃんがそんなことゆーから」


「はいはい。わかった、わかったから」

また泣き出しそうな花を、しーちゃんの腕の中にぎゅって、閉じ込めて。


「今まで、ごめんな」


言葉にしたらまた泣き出しそうで。
必死に首を横に降った。


「花が辛い思いしてるの、知ってたよ」


コクン、と、短く返事、して。


「それでも、ずっとそばにいてくれてサンキューな」


大好きなしーちゃんに、身を預けたんだ。
/ 256ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp