第2章 朔
頭の芯が溶けていくような。
頭の中から溶かされていくような。
そんな、甘い時間。
「…………なんて顔、してんのお前」
「え?」
親指で、唇をなぞられると。
背筋に言い様のない感覚。
「だって、こんなキス、はじめて」
「はじめて?」
「いつもは…………っもっと強引、だし、優しく、ないもん」
「は?」
恥ずかしすぎて。
しーちゃんから離れようとしても。
腰に回された両手がそれを許してくれない。
顔ごと、視線だけはずすのが精一杯。
「……………」
あれ?
言い返されない?
なんか、まずいこと、いっちゃったかな。
謝ろうと口を開いたと同時に。
しーちゃんが立ち上がった気配がして。
今まで同じ位置にあったはずの視線が、上にある。
「強引ってゆーのは、花」
「え」
「こーゆーの」
「………………んん?」
急に。
吐息まで奪われるくらいの、深い口づけに。
目の前がチカチカした。
崩れ落ちそうになる体を、腰に回されたしーちゃんの右手が支えてくれる。
さっきとは全然違う、深すぎる口づけに。
呼吸ができなくて涙が溢れた。
「…………………は、…………っ」
やっと開放された瞬間。
酸素を取り込むために、大きく肩が上下した。