第2章 朔
「ぎゅ、って、していい、ですか?」
「いいよ」
小さな山のふもとの小さな小さな公園。
週末は、たくさん車が止まっているはずのこの駐車場も。
まだ日付が変わるまで余裕のこの時間は。
あまり車が止まってない。
小さなブランコが置いてあるだけの、街中が一望できるこの小さな公園も。
誰もいない。
ぎゅ、て。
しーちゃんの背中へと両手を回せば。
そのブランコを囲むようにたっている小さなポールに腰を落としながら。
しーちゃんがぎゅ、って抱き締めてくれた。
このポールに腰を落として座り込んでるしーちゃんの視線は、花と同じくらい。
いつもみたいに背伸びなんかしなくたって。
ぎゅ、って抱き締めてもらえる。
「花の匂い」
「くすぐったい、しーちゃん」
首筋に顔を寄せると、ふわふわのしーちゃんの髪の毛が首筋をかすめて、くすぐったい。
「花の匂い、おちつく」
「えー?花、香水着けてないよ?」
「そーゆーんじゃなくて、花の匂い」
「わかんない」
「あまーい、匂い」
「えー?」
しーちゃんのが、よっぽどいい匂いだよ?
花の大好きな、香り。
こーゆーの。
相性、ってゆーのかな。
DNA同士が引き合ってる、的な?
なんて、思ってるだけなら、許されるかな。
「花」
「なーに?」
右肩に顔を埋めたままの、しーちゃん。
なんかかわいくて、いつもしーちゃんがするみたいに、右手をしーちゃんの頭に乗せた。
「彼女と、別れるよ」
「え?」
「だから、ちゃんと付き合おう?」
「………………え?」
な、に?
別れる、って。
彼女?
花と、付き合おう、って。
いった?