第2章 朔
「花、あんま走ると転ぶぞ」
「はーい」
「花、花、あっちキリンにエサあげてこよー」
「行く行く」
動物園。
天気にも恵まれて。
楽しいダブルデートが、始まった。
「しーちゃん、撮った?」
「撮ったよ」
「ありがとう、しーちゃん」
キリンのエサやりから、うさぎとの戯れ。
ぞうにまでエサあげられるんだよ。
全部、写真に納めておきたくて。
しーちゃんがカメラマンしてくれてる。
「花、結城」
しーちゃんと一緒に振り向くと。
同時にシャッター音。
「えー?澪、撮るならちゃんととってよー」
「大丈夫、花はどんなでもかわいいから」
「絶対思ってないでしょ」
「澪と花、とってやるよ」
「藤崎さん、撮れんの?」
「写真くらい撮れんに決まってっだろ?」
あはは、とみんなの笑い声が聞こえる中、シャッター音が響いた。
「疲れたー」
「お前、はしゃぎすぎ」
「だってしーちゃんと一緒なんだもん」
嬉しくないわけないでしょ?
「花、それ、結城から?」
「うん、エヘヘー、就職祝い」
「修、指輪なんて彼女でもないやつにあげんの?」
「花は、彼女だよ」
「は?」
「え?」
しーちゃんの言葉にビックリしたのは、藤崎さんだけじゃない。
「お前、年下の彼女は?別れたの?」
「別れてないよ」
「………………笑顔でさらっと、最低なこといってんの気づいてないでしょ」
「大丈夫、自覚してっから」