第2章 朔
そのまま、ソファに押し倒されると。
さっきもらった指輪が、テーブルにコツン、と音を立てて、鳴った。
「しーちゃん、まだ明るいよ?」
「だって、花がくっついてくるから」
「くっつくとだめなの?」
「だめじゃないよ」
しーちゃんに大好きって言われる度に。
心が苦しくなる。
しーちゃんの発する言葉ひとつが、花にはすごい威力をもってのしかかってくるの、知ってる?
ねぇしーちゃん。
花は、しーちゃんにとってなんなのかな。
都合いい時に、ヤれるだけの女なら、他にもいるでしょう?
なんで、わざわざ指輪なんてくれるの?
ねぇ、しーちゃん。
花、期待してもいいの?
「花何考えてんの?」
「しーちゃんのことだよ?」
「俺のこと?」
「うん。下からしーちゃん見上げるの、かっこいいなって」
「なんだよそれ」
「しーちゃん……」
「花」
遮るように、彼の唇が首筋へと触れれば。
「……ん」
吸われるような感覚と、鈍い痛み。
それは徐々に下へと降りながら、何度も繰り返されていった。
「今はこっちに集中。できるよな?」
「……できる」
「さすが、花はいい子だな」
『いい子』。
花はいつまで、いい子でいればいい?
いい子でいればしーちゃんは、この甘い極上のキスを花にずっとくれる?
ずっとずっと。
花のそばにいてくれる?