第2章 朔
「うん、似合ってる」
にっこり笑うしーちゃんの笑顔につられて、私も一緒に笑った。
「ありがとう、絶対大事にする」
しーちゃんからもらった就職祝い。
「何がいい?」って聞かれたから、冗談で言った言葉。
まさかほんとにくれるなんて思わなかった。
「今日は、1日一緒にいられるの?」
「いられるよ」
「彼女、いいの?」
おずおずと目の前に座るしーちゃんを見上げると。
「心配すんなって。今日は途中で帰んないよ」
そう、微笑んでくれた。
ほんとはね。
手を繋いで、街中を歩いたり。
映画をみたり。
そんな当たり前のことがしたい。
指輪よりもずっと、ほんとの花の欲しいものは、そんな当たり前の日常なんだよ。
だけど。
これ以上のことを望んだらきっとバチが当たりそうで。
しーちゃんが花のために作ってくれた時間を、楽しんだんだ。