第2章 朔
「しーちゃん、いいの?」
「花が欲しいって言わなかった?」
「言ったけど」
「こんな安もんで悪いけど」
「悪くない!悪くないよ?」
「じゃ、はい、手、出して?」
にっこり笑うしーちゃんの前に、おずおずと右手を差し出してみれば。
「はい、就職おめでとう」
薬指に、小さな指輪が嵌められて。
一瞬、嬉しさで時が止まった。
「花?」
「あ」
上から降ってきたしーちゃんの声に、視線を指輪からしーちゃんにうつす。
「ごめん、やっぱり花、自分で選んだ方がよかった?」
「え、ちがう!違うよ?」
「サイズ、ちょっと大きかった?」
視線を指輪にうつすと、確かに薬指にはちょっと大きい。
「大丈夫、こっちにする」
薬指から外して、中指に嵌めると、ぴったり。
「ね?」
小さめだけど、指輪の幅が大きいから、中指に嵌めても充分、存在を主張してる『それ』は。
中心に小さな石が埋め込まれていて。
太陽にかざすとキラキラと光っていた。