第2章 朔
「どーだったの?昨日」
「なにが?」
退屈な退屈な授業。
教壇にたつ教師の話を聞いてるのは数人くらい。
どーせこの先生、最後の最後にはレポート提出で単位くれるから、みんなの意識も低い。
「花火大会」
隣でにやにやする澪の気配を感じながら。
ホワイトボードの文字をノートに書き写した。
「別に」
「別に、ってことはないんじゃない?それ、結城にもらったの?」
「うん」
「楽しかった?」
「まぁまぁ」
ホワイトボードを見ながら、適当に返事する。
頭のいい澪と違って、花は暗記苦手。
ちゃんと書いとかないと、わかんなくなる。
「しーちゃん、彼女に呼ばれて花火始まる前に帰っちゃったし」
「え?」
あ。
まだ書いてないのに、すでに消された。
早いんだよね、この人。
「結城と花火見てないの?」
「見てないよ?」
1度書きはぐると、ノートに書くのも面倒になるわけで。
必死で書き留めたノートを閉じて、ボールペンを机に置いた。
「置いてかれかっちゃったし」
んー。
って、背中反らせて思いきり伸びをすれば、肩のこりも和らぐ気がする。
「花」
「ん?」
「大丈夫?」
「なんで?平気だよ?いつものことだし」
そう。
いつものこと。
しーちゃんと彼女に振り回されるのは、今に始まったことじゃないし。