第2章 朔
やっぱり。
こんな幸せな時間、続くはずないんだ。
『ばーちゃんが入院して』
なんでお婆ちゃんが入院したら、しーちゃんが着替え持ってくの?
しーちゃん、お婆ちゃんと同居してないの知ってるよ。
彼女、だよね。
わかってるよ。
お婆ちゃんの入院なんて、嘘。
彼女のところに行ったのなんて、ちゃんと知ってる。
そのくらい、しーちゃんの顔見てればわかるよ。
仲直り、したんだぁ。
あーあ。
キャンプ、行けばよかったなぁ。
「…………………ふ」
涙が、溢れる。
しーちゃんの嘘。
見抜かせないで。
ちゃんともっともらしい嘘ついてよ。
すぐわかるような嘘つかないで。
信じたい。
しーちゃんを信じたいの。
嘘つくなら、ちゃんと責任持って信じさせてよ。
疑わせないで。
バレるような嘘なら、はじめからつかないで。
気付かせないで。
そんなに嬉しそうに、お婆ちゃんのところに行くの。
そんなに急いで。
お婆ちゃんに会いに行くの。
最後まで、嘘を突き通してよ。
しーちゃんの言葉を、信じさせて。
人の波に逆らって、歩いてく。
後ろで次々と上がる花火の音を聞きながら。
この日、私は花火が嫌いになった。